20.突き付けられた事実





「なん、で・・・」



―――(アリオスさん・・・どこ行ったんだろ?)




「なんでこんなこと!!」



―――(次の使命の出発時間が変更になったこと、
伝えたいのに)




「私は、私はただ・・・」



―――「あ、やっと見つけた!アリオスさ・・・」




「やめてよ・・・
  もう、思い出したくないのに!!」



―――(そっちは・・・陛下の私室ッ!?)




「なんでアリオスさんの姿が・・・」



―――(一体、何を・・・?)




「アリオスさんの言葉が、頭から離れないの!?」



―――(・・・な、にを、言って・・・アリオスさん)




「何なのよこの気持ち・・・
  なんで私が自分に振り回されなきゃいけないのよ!!!」



―――(わ、私なんで、泣いて・・・・・・ッ!!)











「見なければよかった!聞かなければよかった!!
  こんな・・・こんなこと、
  知りたくなんてなかったのに!!!」




レイチェル様が、あの花を持って陛下の部屋から出てきた時、
とっくに気付いていたはず。
それなのに、改めて事実として目の前に突き付けられた今、
何故、自分はこんなに取り乱しているんだろう。





「あの時の花・・・
  あんな女にプレゼントするために教えたんじゃない。
  私は、ただアリオスさんに喜んで欲しかっただけなのに!!」




普段からどこか近寄りがたく、
一人の時間を好んでいたようなアリオスさん。
でも私に対しては、少なからず心を許してくれていると思っていた。



それは、初対面の時に大人しく私の手当てを受けていた時。
アウローラ号のラウンジで、隣の席に座らせてくれた時。
惑星エンダールで、私に「星の名物」を尋ねてくれた時。





自分はアリオスさんに近付ける、『特別な存在』だと、思っていた。





私自身、アリオスさんを単なる仕事相手とは考えていなかった。
もっと近しい・・・『仲間』や『パートナー』のような、
今まで私の周囲にいた誰とも違う存在だったから。




『お前の護衛は、俺の仕事だ』




だからあの時、ショックを受けた。
アリオスさんにおける私の存在の大きさと、
私の中でのアリオスさんの存在の大きさが一致しないことに。





(もっと私がアリオスさんにとって大きな存在に、
  『特別な存在』に、なりたい・・・)








でも、アリオスさんにとっての『特別な存在』は、
他の誰でもない、この聖獣の宇宙の初代女王だった。







「だいたい何よ、あの女。
  あれで女王陛下やってるつもり?
  この前の定期報告だって、
  全部わかってるフリしちゃって。
  一体誰の力で、聖獣の宇宙がここまで安定したと思ってるのよ!!」



いつも行われている、私とレイチェル様、主任研究員3人の時と、
何ら変わりのなかった定期報告。
たった一人蚊帳の外で、空気みたいに無言で存在感がなくて。
・・・本当にこれが女王?
試験でレイチェル様を破った程の実力者?




「その癖一人前に恋愛ごっこ?
  ハッ、笑わせないでよ、アリオスさんは・・・
  アリオスさんは私の・・・!!」








「私のものなんだから」








そう、全ては。
私がアリオスさんの事を好きだから。















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―2009.08.26―





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