02.運命の少女





「初めまして、女王陛下」
「あなたが、エンジュ・サカキ・・・
  この幼き聖獣の宇宙を導く『伝説のエトワール』」



夢で見ていた少女と、初めて顔を合わせる。


とても、輝きに満ちた目。
生きる意志に、未来への希望に・・・自信に満ちた笑顔。


まさに、今の私と正反対のような存在だと、思った。




「それじゃあ、これからエトワールとして生活する部屋へ案内するヨ」
「あの・・・レイチェル様、その前にお願いがあるんです。
  私を、王立研究院へ連れて行ってください!」
「それはイイケド・・・でもアナタは今日聖地に着いたばかりで、疲れたりしていない?」
「私は大丈夫です!それよりも・・・」

少女はおずおずと、けれどはっきりとした声で告げた。

「一日も早く、陛下やレイチェル様のお役に立てるようになりたいんです!!」
「エンジュ・・・」
「そして、この聖獣の宇宙が美しく成長する姿を見守りたい・・・
  どうか、お願いします!」







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「最近のエンジュってば、ホントにスゴいんだよ!
  宇宙構成論に地質学、宇宙物理学までもうマスターしてるし、
  王立研究員とも対等に渡りあえてるんだ」
「そ、う・・・・・・」
「それに、この前の土の曜日にはワタシの部屋まで遊びに来てくれて。
  『よかったらどうぞ』って、手作りのマドレーヌをもらったんだ!」
「・・・・・・・・・そう、なの」
「なんていうのかな、カワイイ妹ができた感じ、なのかも。
  ワタシに似て、超優秀なんだから♪」
「・・・・・・」


そのとき、部屋のドアをノックする音が響いた。


「・・・あの、失礼します」

来訪者は、噂の当人エンジュだった。



「レイチェル様は、いらっしゃいますか・・・?」
「あれ、エンジュどうしたの?」
「エトワール・・・」
「陛下!起きていらしたんですね。ご無沙汰しております」
「ええ・・・あなたも元気そうで、何よりだわ」
「あの、宮殿の職員の方から、レイチェル様がこちらにいらしていると伺って・・・
  先日お話のあった、モラノ星系のデータについてなんですけど」
「それなら、王立研究院へ行ったほうが良さそうだネ」



「それじゃあアンジェリーク、アナタはゆっくり休んでて?」
「失礼いたします、陛下」





パタン、と乾いた音が二人と私を隔てる。





一人、取り残された私。


エンジュ・サカキ―――エトワールは、
この短期間で膨大な量の理論を完全に理解してしまうなんて・・・
私でさえ、図書館に通い詰め、数え切れない蔵書を読んで、
あれだけの期間をかけたというのに。

そして、今や私の知らない話をレイチェルと―――



「そう、彼女は、優秀なのね・・・」



苦もなく、難解な理論を自分のものにできる理解力。
明るく、誰とでも親しくなれる社交性。
私の持っていないもの、
ずっと欲しくて・・・でも手に入れられなかったものを持っていて。


どうして彼女は。



・・・・・・どうして、私は。






心なしか、今日は太陽が翳っているような気がした。














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―2009.01.08―





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