01.幼き宇宙







今日もまた、身体が重い・・・



ベッドから起き上がることもできず、女王アンジェリーク・コレットは、
ただ、窓の先に広がる聖地の庭園を眺めていた。


今日も、太陽の日差しが眩しい・・・
天気も気温も、いつもと何一つ変わらない。
すべて女王の、私の力によって管理された美しい世界。

そして外界とは時の流れすら異なる、隔絶された世界。



幼き聖獣の宇宙を支えることが、これほど身体的負担になるなんて・・・
一日を、ずっとベッドの上で眠り続けて過ごす日々。
倦怠感が付きまとい、思うように動かせない身体。
意識が混濁して、物事を集中して考えられない思考。
目覚めている時間すら不定期だった。


眠っている間は、ずっと夢を見ている。
それは宇宙の記憶とも呼べる現在の宇宙の姿であったり、未来の宇宙の姿であったり・・・
そして時に、自分の懐かしい思い出であったり。








「あれ、もしかして起こしちゃったかな・・・調子はどう?」
「レイチェル・・・」


気付くと、ベッドサイドには女王補佐官レイチェルが立っていた。
花瓶を持っているということは・・・水を替えてくれたのだろうか。



「今日はね、懐かしい夢を見たの。
  みんなで神鳥の宇宙を救うために、旅をしていた頃の夢。
  私の隣には、いつもアリオスがいてくれた、あの日々・・・なんだか懐かしいな」

「アリオス、ね・・・」




何故だろう、アリオスの話をすると、レイチェルの表情は暗くなる。
そして強引に、話を逸らしてしまう。

まるで、『アリオス』という名前すら聞きたくないと、言っているみたいに。




「そうそう、今度ね・・・神鳥の宇宙から『エトワール』がやってくるんだって!」
「エトワール・・・それは・・・?」
「聖獣の宇宙の成長を助けてくれる、選ばれた少女のコトなんだ。
  まだ守護聖のイナイこの宇宙に、サクリアを運んでくれる伝説の存在みたい」


選ばれた少女・・・あの子のことだろうか。
時々夢に見た、活発な感じの女の子。
名前だけは知らないけど、とても明るい笑顔で、宇宙を飛び回っていた子。



「私も彼女のデータを見せてもらったケド・・・なかなかカワイイ子だったよ」
「そう・・・」
「確か、名前は・・・」







「エンジュ・サカキよ」













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―2008.12.26―





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