原因不明の、機能低下―――





それが、レインから告げられた病名だった。








最初は、意味が分からなかった。


少し前から・・・ジェイドさんの調子が悪かったのは確かだった。
何の前触れもなく、倒れたことも何度かあって・・・



その度に、レインにメンテナンスをしてもらっていた。


ジェイドさん自身も「大丈夫」って・・・
「ちょっと疲れたのかな?」って明るく笑っていて。




でも、今回だけは違っていた。




いつもはすぐに目を覚ますジェイドさんが、
なぜかなかなか意識を取り戻さなかった。


そして、いつものようにメンテナンスをしているレインの顔が、
なぜかひどく強ばって見えた。




一通りメンテナンスを終えたレインに、
「話がある」と廊下に呼び出され・・・






そこで告げられたのは、ジェイドさんの身体についてだった。







「今までお前には言うなって、ジェイドに口止めされてたんだが・・・
  何度か倒れたりしていたのは、実はその機能低下のせいなんだ。

  ただ・・・オレにも原因が全くわからない。

  何しろジャスパー・ドールの存在自体が稀だからな。
  カルディナ大学や財団に保管されていた過去の記録にも、
  該当するものが全くないんだ・・・

  それに、今回は今までと違って急速に悪化してる。
  このままじゃ、ジェイドは・・・・・・」


「・・・・・・・・・て」

「えっ?」

「どうして今まで何も教えてくれなかったの!?
  レインは、ちゃんとメンテナンスしてるって言ってたじゃない!!
  どうして・・・どうして・・・っ」

「おい、アンジェリーク!」






嘘だと、言ってほしかった。
その言葉を・・・本人の口から聞きたくて。


レインに背を向け、横たわるジェイドさんの側に駆け寄った。





「・・・っ、ジェイド、さん・・・
  意識が、戻ったんですね・・・
  本当に・・・本当によかった・・・・」

「あぁ、アンジェリーク・・・
  ・・・・・・レインから、話を聞いたんだね」



「・・・・・・・・・はい。
  ジェイドさんの、病気のこと・・・

  ・・・・・・嘘、ですよね?

  また、いつもみたいにレインにメンテナンスをしてもらって、
  そしたらきっと・・・」



「・・・・・・ごめん、アンジェリーク・・・・・・」




「そ、んな・・・
  そんなに大切なこと、どうして私には話してくれなかったの!?
  私なんて・・・ジェイドさんにとって、どうでもいい存在だってことですか・・・?」


「それは違う!!」

いつも穏やかなジェイドさんが、
珍しく声を荒げた。



「違う・・・俺はただ、君を悲しませたくなかった・・・
  それだけ、なんだ・・・」

「・・・・・・っ、ごめん、なさい・・・」

「・・・いや、俺は君に怒られて当然のことをした。
  もっと早く・・・どんなことでも、きちんと君に伝えておくべきだったんだ。

  でもね・・・今回のことは、俺自身にも原因がわからないんだ。
  自分の身体のことなのに、こんなのは初めてで・・・





  俺はこのまま・・・動かなくなってしまうのかな・・・・・・」











それから、数日後・・・


ジェイドさんは、目に見えて衰弱していった。

起きあがることすら少なくなって・・・
眠っている時間が増えていった。








―――そんなある朝。


その日に限って、
眠っているはずのジェイドさんが、
何事もなかったようにベッドから起き上がり、窓際に立っていた。



「えっ・・・ジェイド、さん・・・?」

「あぁ、おはよう、アンジェリーク。

  今日は珍しく調子が良いんだ。
  よかったら・・・久しぶりに、二人で出かけてみないかい?」








次へ>>


===================================


―2006.9.1―


「なんちゃって創作部屋」に戻ります