22.乱れる力





「・・・コレ、どういうコト?」
「・・・・・・」



突然、女王補佐官殿から執務室に呼ばれ、
机の上に広げられた資料を目の前に突き出された。
そこにはさまざまな数値やらグラフが記されてあったが・・・



「意味が分からないな」
「とぼけないでよ!!
  最近のこの変化・・・原因はアンタなんでしょ?」
「変化?一体何の・・・」



明らかに不機嫌そうな女王補佐官殿。
以前会ったときもそうだったが、今回はどうも様子が違う。
俺はとりあえず資料を手に取り、表紙に書かれた文字を目で追った。



「宇宙における、サクリア量の平均値・・・」
「見ればわかるでしょ?」




「乱れてるの。宇宙のサクリアバランスが」




安定化した宇宙が、乱れている・・・?
にわかには信じがたい話だった。
最近のエトワールの任務にも、特に変わった様子はなかったというのに。



「そんな、はずは・・・」
「何?ワタシの言うコトが信じられない?
  別に信じる信じないはアンタの勝手。
  ケド・・・知ってるはず。あのコの変化を」
「ッ!?」




女王補佐官殿の言う『あのコ』・・・間違いない、アンジェリークだ。




確かに、最近起きているあいつに会った記憶がない。
一時期は起きて普通に笑って話すことも、
自分から「定期報告に参加したい」と意欲的になったことすらあった・・・。
そんなあいつが、今はベッドに寝たきりだ。
以前の、宇宙が未熟で不安定だった頃と同じように。



「それに聖地の気候変化・・・」
「気候の、変化?」
「この前聖地に雨が降ったこと・・・覚えてる?
  って、アンタはエンジュの付き添いで聖地に居なかったんだっけ?」



ため息混じりに、女王補佐官殿は話し始めた。



「知ってると思うケド、聖地の天候はすべて女王の力によって制御されてる。
  湿度・気温それらすべてが、快適な状態で保たれているってワケ。
  だから聖地に雨が降るなんて、滅多にあるはずのないコト。
  ・・・女王の力が、乱れてる証拠」




『女王の力の乱れ』―――


それは今のあいつの状態と、
密接な関わりがある、ということなのか・・・?




「アンタ・・・あのコに一体何したの?」
「・・・別に、何も」
「『何もしてない』?そう、それが問題ってワケね」



つかつかと俺の前に歩み寄ると、一方的に捲し立てた。



「ワカってる?ワタシがアンタをあのコの傍に置いてあげるワケ。
  ホントはワタシだって、今すぐアンタを聖地から追い出したい。
  でもあのコ・・・女王陛下が、アンタの存在に支えられているのも事実。
  アンタにはね、あのコの女王としての力を安定させてもらわなきゃ困るって言ってるの!」
「じゃあ俺に一体どうしろと・・・」
「早急に、あのコの状態を安定させて頂戴!!
  とにかく今はそれだけに専念させてアゲル。だから」



一層低く、脅すような声で突きつけられる。





「失敗は、許さない」














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―2010.01.30―





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