「だめっ、来ないでレイン!!」 「今ここでお前を失うくらいなら、オレが・・・」 そう言うと、 レインは私に繋がれた装置の線を引きちぎり、投げ捨てた。 その瞬間。 装置から眩しい火花が飛び散る。 「まずい、このままでは装置の力を制御できない・・・!!」 焦るヨルゴさんの声。 すると私たちの周りが、まばゆい光に包まれる。 その中で、レインが何かを伝えようと唇を動かした。 私は必死にそれを目で追って・・・ 強い光に包まれた。 ―――私、死んじゃったのかな・・・? 気がつくと、私の周りは温かくて穏やかな光に包まれていた。 さっきまでの強烈な光とは違う、 心のどこかで懐かしいと感じるような・・・ そんな何かに守られて。 「・・・間に合ったようだな」 声の方向を見ると、なぜかそこには居るはずの無いエルヴィンがいた。 「エルヴィン・・・どうして、ここに? って、それよりもエルヴィンが、しゃべって、る・・・?」 「・・・私は、この宇宙の意思の集合体。 ここに存在する女王の卵の運命を、見守るもの」 「エルヴィンが、宇宙の、意思・・・?」 俄かには信じられなかった。 確かに、不思議な猫だとは思っていたけれど・・・ 宇宙という果てしなく大きな存在と関わりがあったなんて、誰が考えただろう。 「永い時を待ち続けた、女王の卵よ。 貴女は、やがてこの宇宙を統べ、導く存在。 今、女王の卵である貴女を失うわけにはいかないのだ・・・」 「・・・それよりレインは?レインはどうしたの?」 ここには、私とエルヴィンしか居ない。 ヨルゴさんも、レインも・・・あの強い光を放った装置すらなくて。 けれどその問いに、答えはなかった。 「・・・・・・まさか、さっきの装置の暴走で・・・・・・」 「あれは、時空移動の影響だろう。 歪められた力が暴走し、周囲までも巻き込んだ・・・ 私の力では、貴女一人を救うのが精一杯だったのだ」 私一人。 その事実は、ずんと胸に重くのしかかる。 「そこに、レインはいない」のだ、と。 「そんな・・・・・・どうして、私だけ? 女王の卵だから、私は一人で生き残らなければならないの!?」 「ならば貴女は、 世界よりも一人の人間を選ぶというのか・・・?」 女王の卵だから、なんて関係ない。 「私は、レインの居ない世界に居場所なんてないわ」 私はレインと一緒にいたい、ただそれだけ。 レインがいないのなら、そこに私は居ないだけ。 「そうか、それほどまでに貴女は・・・ ・・・ならば、仕方あるまい」 「私が女王の卵なんて・・・ごめんなさい。 これじゃあ女王の卵失格だよね」 「よいのだ・・・女王とは貴女の未来の可能性の一つに過ぎない。 人を動かすものは、他でもない自分自身の強い意志なのだから」 『人を動かすものは、自分自身の強い意志』――― そう、今私を動かすものは、私の意志。 それはひどくわがままで。 聞き分けのない子供のようだと、思った。 許されるはずなどない。でも・・・私に他の道なんて考えられなかった。 「・・・・・・うん、ありがとうエルヴィン」 「では、私は次の女王の卵が現れるその時まで、 再び眠りにつくこととしよう。 さらばだ、強き少女アンジェリーク・・・」 そして、私の周りから温かな光が消えていく。 「本当に・・・ありがとう、エルヴィン。 そして、レイン・・・」 最期に、あの時レインに言えなかった言葉を、 レインが私に伝えようとした言葉を伝えようとした言葉を思い出す。 「さようなら」 ===================================== |
タイトルに「Another Story」とあるように、以前の「約束だから」の別バージョンです。 元のイベントは変えずに、でも視点や展開が逆なのです。 「もし、アンジェリークがあのレインと同じ立場になったら・・・?」 と考えたとき、このお話が浮かびました。 アンジェリークとレインの違いは「相手のいない世界をどう生きるか」にあると思います。 レインはちゃんとアンジェリークの「平和な世界を生きて」という約束を守ります。 例えそれが、自分の意思に反したものであっても、 アンジェリークとの約束を守ろうとするのです。 でもアンジェリークは・・・ レインへの想いがあまりに、真剣で、まっすぐで、純粋すぎて。 レインのいない世界に、耐えられないと思うのです。 だから、もしアンジェリークがこの状況に陥ったときには、 きっとこんな選択をするのではないか、と考えてしまいます。 長々とした妄想ですみません・・・。(いつも妄想オチ) |