寒いと思っていたら、やはり・・・

「降ってきたんだな・・・」

そう呟き、灰色の空を―――ウィーンの空を見上げる。





たった、一人で。






ウィーンに来てからというもの、俺は空を見上げることが多くなったように思う。
それはこの空の続く場所に、彼女がいるからだろうか。


まだ心のどこかで、彼女へのつながりを探しているからだろうか。




街中で彼女に似た人を見つけては、目で追って・・・
その度に、自分の弱さを嘲笑ったりもした。
そんなことをしても、ここにいるはずがないのに。
自分が一人だということを、痛いほど思い知らされるだけなのに。







ウィーンへと旅立つと決めた時―――


彼女を遠くから見守ることができればいい、
彼女が幸せならばそれでいいと、思ったはずだった。

だが思い出の中の君は、あまりにも鮮やかに俺に微笑みかける。

その笑顔が俺だけのものではないと、知っていた。
もし君に惹かれてやまないこの気持ちを、告げていたならば。


君は、今俺の隣で微笑みかけてくれていたのだろうか・・・?














今、君はどうしているだろう。


ヴァイオリンの練習を続けているだろうか。
それとも勉強に追われているのだろうか。







君の街で、雪は降っているだろうか。









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ゴメンやっぱり無理でした土浦・・・(前回の火原創作のあとがきより)
だって・・・あまりに鮮やかにイメージが浮かんだもので・・・
そう、このお話は藤田麻衣子さんの「この白い雪と」を聴いていて思い浮かんだものです。
この曲の歌詞って、まるで香穂子を想いつつウィーンに行ってしまった月森の、
その心の中を歌っているかのような気がしてしまいます。
もし機会があれば、是非聴いてみてください・・・とても良い曲です。
・・・余談ですが、月森には冬という季節が似合う気がします(←ホントに余談だな)



―2008.09.06―


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