寒いと思っていたら、やはり・・・ 「降ってきたんだな・・・」 そう呟き、灰色の空を―――ウィーンの空を見上げる。 たった、一人で。 ウィーンに来てからというもの、俺は空を見上げることが多くなったように思う。 それはこの空の続く場所に、彼女がいるからだろうか。 まだ心のどこかで、彼女へのつながりを探しているからだろうか。 街中で彼女に似た人を見つけては、目で追って・・・ その度に、自分の弱さを嘲笑ったりもした。 そんなことをしても、ここにいるはずがないのに。 自分が一人だということを、痛いほど思い知らされるだけなのに。 ウィーンへと旅立つと決めた時――― 彼女を遠くから見守ることができればいい、 彼女が幸せならばそれでいいと、思ったはずだった。 だが思い出の中の君は、あまりにも鮮やかに俺に微笑みかける。 その笑顔が俺だけのものではないと、知っていた。 もし君に惹かれてやまないこの気持ちを、告げていたならば。 君は、今俺の隣で微笑みかけてくれていたのだろうか・・・? 今、君はどうしているだろう。 ヴァイオリンの練習を続けているだろうか。 それとも勉強に追われているのだろうか。 君の街で、雪は降っているだろうか。 ====================================== |
ゴメンやっぱり無理でした土浦・・・(前回の火原創作のあとがきより) だって・・・あまりに鮮やかにイメージが浮かんだもので・・・ そう、このお話は藤田麻衣子さんの「この白い雪と」を聴いていて思い浮かんだものです。 この曲の歌詞って、まるで香穂子を想いつつウィーンに行ってしまった月森の、 その心の中を歌っているかのような気がしてしまいます。 もし機会があれば、是非聴いてみてください・・・とても良い曲です。 ・・・余談ですが、月森には冬という季節が似合う気がします(←ホントに余談だな) |