夕日に染まる校舎。




今日もやっと一日が終わった、と音楽室の窓枠にもたれ、
家路へと急ぐ生徒たちを何気なく見ていた。



「金澤先生、さようなら」

「おう、気をつけて帰れよー」



その後ろ姿にひらひらと手を振って。
最後の生徒が出て行ったところで、校舎内の戸締りに向かう。


「何でよりによって戸締りなんて・・・当番とはいえ面倒くさいだけだろ」


音楽室を出て、施錠しようとした瞬間。




見知った後ろ姿を見つけ、窓の外に目を凝らす。





「あれは、日野・・・・・・と、月森か?」



楽しそうに話す日野。
月森も・・・普段では見たことのない、柔らかな表情。


妙に絵になる風景。






・・・そんなの、当たり前だろう。





覚悟はしていたものの、実際見てしまうと正直・・・
どうしていいかわからなくなる。


だが、二人はひどく「お似合い」ってヤツで。



あぁ、あいつには俺の前より自然でいられるのか、と思ってしまう。




例えコンクールが終わっても、
教師と生徒という関係が終わるわけではなく。

ましてや特別な感情を抱くことなど許されない。



「俺と一緒に帰る、なんて・・・・・・ありえないよな」



そう思うと、急に心が冷えていく。





きっと・・・あいつは月森と一緒に帰るのだろう。













日も完全に沈みきった頃、校舎を後にする。


校舎内にいるのは、仕事熱心な先生方ばかり。
生徒の姿はどこにも見当たらない。




しかしたった一人・・・校門に寄りかかる人影が残っていた。




「・・・っ、お前さん・・・」

「あ、金澤先生!」



最初は、俺の目の錯覚だと思った。

いつだって隣にいてほしい・・・そんな希望が見せる幻だと。



「金澤先生と、一緒に帰りたくて」

「てっきりお前さんは、月森と一緒に帰ったんだとばかり・・・」

「見てたんですか!
  その、月森くんには悪いと思ったんですけど・・・断っちゃいました」



まったく、どうして・・・
どうしてお前さんはこうも俺を喜ばせる名人なんだか。



「こうも暗いと、一人で帰るのは危ないだろう?
  見過ごせないよな・・・教師としては」



我ながら、変な言い訳だなんて思いながら。





「一緒に帰ろう・・・香穂子」









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あれ・・・なんで気がついたら金澤先生書いてるんだろう。
ここまできたらもう雑食としか・・・。
本編で金澤先生と自宅まで一緒に帰ることができないため、
「それはさみしいよ!」とイベントを捏造してしまった次第です。
よく考えてみると・・・金澤先生結構好きなのかも?
そして友情出演の月森くんありがとう!
次は是非月森くんのお話を!!・・・・・・書けるよう善処します。


―2006.11.19―


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