「ふぅん、陛下ってば相変わらずカワイイよねぇ」



アンジェリークに追加の仕事を増やしてから、
ロザリアはオリヴィエの執務室に来ていた。



「ええ、あの子は女王候補時代から、
  そのまま女王になったようなものだから」
「実はジュリアスも喜んでるんじゃない?
  愛する女性から、チョコレートがもらえるなんて、さ。
  いくら二人がラブラブとはいえ、
  他の守護聖の手前、受け取りにくいところもあったんじゃないかな」
「そうね、ジュリアスならなおさら・・・この宇宙の、首座の守護聖だもの」





「受け取れない」と突き返されても、諦めない強さ。
例え相手が誰であろうとも、「好き」とはっきり告げられる勇気。
ロザリアには、そんなアンジェリークが眩しかった。
そして女王と守護聖という壁を乗り越え、
今幸せに暮らす二人が、とても羨ましかった。



(私は、アンジェリークのようには振る舞えない)


けれど、とロザリアは心の中で祈った。


(けれどどうか・・・あなたの強さを、
  あなたの勇気を今、少しだけ分けて頂戴・・・!!)






「でも欲を言えば、アンジェリークにはもう少し、
  女王としての落ち着きがあれば良いのだけれど」
「普段の執務の時とか?」
「そうなのよ!まったく・・・いつだったかしら、
  あの子ってば、すぐにサインの必要な書類を机の上に置いたまま、

  『ロザリア、後はよろしくね!』

  なんて書き置きを残して居なくなってしまったのよ!?
  あの時は、どんなに慌てた事か・・・」




結局、この時は宮殿の職員総出で、聖地中を探し回ったのだ。
しかも、見つかったアンジェリークは悪びれた様子もなく、


「ロザリア、すごーい!どうしてここがわかったの?」


なんて驚かれてしまい、
ロザリアは思わず眩暈すら起こしたほどだ。







「キャハハ★ホント元気いっぱいってカンジじゃない!
  やっぱり陛下にジュリアスなんて勿体なかったかな?」
「あら、オリヴィエはあの子のことがお好きでしたの。
  でしたら・・・」



「これは、必要ありませんわよね?」


オリヴィエの目の前に、
隠し持っていた小さな包みをちらつかせる。



「あれ・・・もしかしてそれ、私の為に・・・?」
「ただの気まぐれですわ。
  後程、責任を持って自分で食べますからご心配なく」
「その割には・・・ロザリア、目の下にクマが出来てるけど」
「っ!!そんな、こと・・・」
「中身は手作りで、しかも自分が納得できるまで何度も作り直したんだ?」



(どうして・・・
  どうして、この人にはわかってしまうのだろう)


オリヴィエにかかれば、ロザリアのことはいつだって見通されてしまう。


実は、今日チョコレートを渡すことは、
決してロザリアの気まぐれではなかった。
どうしても、オリヴィエに美味しいチョコレートを食べてもらいたくて、
試行錯誤を重ねるうち、夜が明けてしまっていたのだった。




「ありがと。確かに受け取ったよ、ロザリアの気持ち。
  私にとって、やっぱり一番はあんただから、さ」



いつもとは違う、オリヴィエの真剣な眼差しと声に、
ロザリアはもう何も言えなくなってしまう。




(私、この人には敵わないんだわ。これからも、ずっと・・・)





そしてロザリアは、大人しくオリヴィエにチョコレートを手渡した。









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突発的に作ってしまったバレンタイン創作その壱の番外編。
まさか前のジュリリモの話の流れで、
今度はロザリアを書こうとは・・・!!
しかもお相手がオリヴィエ様とか!信じられません・・・
でもきっとこの二人なら、
何かと大人の話してそうだな〜とか、
オリヴィエ様なら、ロザリアに的確なアドバイスをしてあげられるんだろうな〜とか、
きっとロザリアもオリヴィエ様の前では、女王補佐官であり、
一人の女性なんだろうな〜とか。
すべて妄想ですすみません。



―2009.02.23―


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