カレンダーを見れば、12月。
今年ももう終わっちゃうんだ・・・って思うと、なんだかさみしい。


聖地で過ごす初めてのクリスマス。
私だって17歳、クリスマスぐらい大好きな人と過ごしたい、って思っちゃう。

やっぱり、あの方と一緒がいいな・・・


「・・・なんて、いけないいけない!今日も頑張って新宇宙の育成をしなくちゃ」



今は生まれたばかりの新宇宙の女王を決める、大事な試験の真っ最中だから。
夢見るクリスマスは、もう少しおあずけかな。
現実を見るとちょっと悲しくなって、ため息なんてつきながら部屋を出ると、
ちょうど同じ女王候補のレイチェルに出会った。


「おっはよーっ!アンジェリーク♪」
「おはよう、レイチェル。これからどこかへ行くところ?」
「もう帰ってきたトコロ。アンジェリークってば、今から出かけるの?」
「そのつもりよ。今日は守護聖様方に育成をお願いして・・・」
「私なんかもう今日の分はお願いしてきちゃったよ!
  ホントマイペースだよね、アンジェリークって」
「そ、そうかな・・・?」
「・・・まぁ、いいや。それよりさ、さっきロザリア様のところで聞いてきたんだけど、
  女王陛下がクリスマス・イヴの日は特別に試験をお休みにしてくれるんだって!!」
「ええっ!?そうなの?」
「・・・もしかして、今から誰かと約束してくるのかな〜?」

なんて言いながら、不敵な笑みを向けてくるレイチェル。

「それは秘密!」
「いいよ、また今度教えてもらっちゃうから。じゃあね!」



やっぱりレイチェルって元気だなぁ。
自分の部屋へと戻っていく後ろ姿を見て、つくづくそんなことを考える。
なんでもできて、しっかりした頼りになるレイチェル。

レイチェルはもう、どなたかとクリスマスの約束をしたのかしら?

・・・そんなこと考えてる場合じゃないんだった!
レイチェルには秘密にした、あの方とクリスマスの約束をしなくちゃ!!







「失礼します・・・ヴィクトール様、いらっしゃいますか?」

ノックをしても返事がなかったので、そっとドアを開けてみた。


「ん?アンジェリークか。・・・すまない、少し集中しすぎていたようだ」

見ると、机の上には書類がたくさん広げてあった。


「もしかして・・・お忙しかったですか?」
「いや、もう少しで終わるから、いつもの椅子に掛けていてくれ」

ヴィクトール様のお仕事の邪魔をしないようにそっと部屋に入り、椅子に座って待つことにした。

普段はとっても優しいけれど、
こうして真剣な顔をして机に向かっている姿を間近で見るのは初めてだった。
こんなとき、やっぱり王立派遣軍の軍人さんなんだなぁって改めて実感する。
そんな横顔もやっぱり素敵で、ついつい見入ってしまう・・・




「・・・よし。これで最後だ。
  待たせて悪かったな、アンジェリーク」
「いえ、こちらこそ・・・お忙しい時にお邪魔してしまってすみませんでした」
「構わんさ。・・・ところで、今日は何か用事があったのか?」
「えっと・・・その・・・」
「今日も精神の学習に来たのか?」
「そ、そうじゃないんですけど・・・」

せっかくここまで来たのに、いざとなると緊張して言葉がなかなか出てこない。

「あの・・・ヴィクトール様は、クリスマス・イヴの日はお休みになるってお話、ご存知ですか?」
「そういえば、今朝セイランとティムカもその話をしていたな」
「じゃあ、その日に何かご予定はあるんですか?」
「いや、今のところはないが・・・」
「そ、そうなんですか?
  あの・・・もしよろしかったら、その日は一緒に森の湖にご一緒していただけませんか?」
「あ、あぁ・・・そうだな。
  たまにはゆっくりとした休日を過ごすのもいいだろう」

とにかく必死になりすぎて、畳み掛けるようにして質問攻めをしてしまう私。
そのことにようやく気づいたら、なんだか急に恥ずかしくなってきて・・・

「あ、あのっ・・・じゃ、じゃあ24日はよろしくお願いしますっ!」


しどろもどろになりながら、とりあえずヴィクトール様の部屋を後にした。

どうしよう・・・すっごくうれしいかも。
今日の忙しそうな様子では断られちゃうかな、ってちょっと思っていたから・・・。
24日が早く来ないかな・・・









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そして・・・やっとのことで、約束の24日がやってきた。
前日までに育成も学習も一段落させておいたから、今日はヴィクトール様とゆっくり過ごせそう。
そんなことを考えていると、誰かが私の部屋のドアを叩いた。

「アンジェリーク、いるのか?」
「はっ、はいっ!!」

ヴィクトール様が私の部屋までわざわざ迎えに来てくれたなんて、すごくうれしい。
用意したクリスマスプレゼントも持ったし・・・
ヴィクトール様、喜んでくださるといいな。






普段からロマンチックな場所だけど、
冬の冷たい空気の中で見る森の湖もまた新鮮だった。
空気も澄んでいるから、星がよく見える。



それよりもまず最初に!と思って、早速私は用意してきた包みを取り出す。


「あの、ヴィクトール様・・・これ、クリスマスプレゼントです!」


中身は、温かそうな手袋。


ヴィクトール様は、いつも手袋をはめていらっしゃるから、
喜んでいただけるかな、と思ったんだけど・・・



「これは・・・大切に使わせてもらおう。
  ありがとう、アンジェリーク」

よかった、ヴィクトール様の喜ぶ顔が見られただけでなんだか幸せな気分になれる。



すると、ヴィクトール様がおもむろに小さな包みを取り出した。


「その・・・どうも女性の好みというのがわからなくてな・・・
  受け取ってもらえないか、アンジェリーク」


そう言って差し出された包みを開けてみると・・・

可愛らしいリボンだった。

「わぁっ、可愛い・・・早速つけてみてもいいですか?」
「あぁ、俺がつけてやろう」


ヴィクトール様の大きな手が私の髪に触れて、ちょっと緊張 してしまう。


「・・・・・・さぁ、できたぞ」
「どうですか、ヴィクトール様?」

「・・・そうだな、似合ってるんじゃないかと・・・思うぞ」


少し照れながらも答えてくださるヴィクトール様。







すると、突然空からはらはらと雪が舞い降りてきた。



「あれ・・・聖地で、雪・・・?」
「あぁ、女王陛下が今日は特別に雪を降らせてくださるそうだ」


ホワイトクリスマスなんて・・・ホント夢みたい。
こんなクリスマスが過ごせたらいいなって、ずっと前から憧れてたから。



「・・・綺麗だな」
「・・・え?」
「こうして雪が降るのを、お前と二人で眺めるのもいいものだな」

「私も・・・ヴィクトール様と一緒に過ごせて、うれしいです」


今日は一生の思い出に残るクリスマスになりそう。
ヴィクトール様をお誘いして、本当によかった・・・。






しかし、いくら気候の穏やかな聖地とはいっても、冬の夜はさすがに寒い。
しっかり温かい格好をしてきたつもりだったんだけど・・・


「・・・っくしゅん!」
「おい、大丈夫かアンジェリーク?」

そう言って、ヴィクトール様は自分のマフラーを私に巻いてくださった。

「でも、それじゃヴィクトール様が・・・」
「俺は構わんさ。それよりもアンジェリークが風邪をひく方がよっぽど心配だから・・・な?」
「では・・・お言葉に甘えて、お借りします」



ヴィクトール様のマフラーはとってもあったかくって。
これからもずっと、こうして2人でゆっくり歩いていけたらいいな。




「来年も一緒にクリスマスを過ごしましょうね、ヴィクトール様!」









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大変大変遅くなってしまいましたが、
瑕歩さまリクエストのヴィクコレがようやくできあがりました!
しかしこうして創作を書いていて思うのですが、
私はよっぽど森の湖が好きらしいですね!!
私の今まで書いたアンジェ創作のほとんどに、
森の湖が出てきていたことにお気づきでしたか?
まったく、何書いてんだか・・・(遠い目)
しょーもない作者ですが、これからもどうぞよろしくお願いいたします!


―2004.12.21―


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