このところ、セイラン様はずっとアトリエでの創作活動が忙しくて、 なかなか2人で出かけることができなかった。 セイラン様は、この宇宙でも指折りの有名な芸術家だって頭では理解していたけれど、 でも心の中で広がってゆく想いは止められなかった。 「セイラン様に会いたい・・・」 耐えられなくなった私は、また断られるだろうとわかっていたけれど、 思いきってセイラン様に手紙を書いた。 しかし数日後、セイラン様から送られてきた手紙は、意外にもよい返事で。 次の日の曜日に、アルカディアの約束の地、その木の下で会う約束をした。 当日、久しぶりにセイラン様にお会いできると思うと、服装にも髪型にもついつい力が入ってしまう。 早起きして作ったサンドイッチも、ちょっと作りすぎてしまったぐらいに。 前日から悩みに悩んで決めたとっておきのワンピースと、買ったばかりのリボンで髪を結び、 約束の場所へ急ぐ。 あんまり服装に時間をかけすぎて、ちょっと遅れてしまったかもしれない・・・ あわてて走っていくと、約束の木の下にはもうセイラン様が待っていた。 「はぁっ、はぁっ・・・お、遅くなってごめんなさい、セイラン様・・・」 「やぁ、遅かったじゃないか、アンジェ。今日は珍しく寝坊かい?」 「ちっ、違います!!」 「クッ、冗談だよ。僕が少し早すぎたみたいだ。 君を待つ時間というのも、なかなか刺激的だね」 2人でゆっくりとした時間を過ごせるのは、本当に久しぶりだった。 今日はお天気も良くて、約束の地は暖かい空気に包まれていた。 時折吹く草原を渡る風が気持ちいい。 私はセイラン様にお話したいことがたくさんあって、いつも以上におしゃべりだった。 そんな私の他愛のない話に、セイラン様は楽しそうに耳を傾けてくださる。 私が作ってきたサンドイッチも、喜んでいただけたみたい。 2人だけのランチの後は、少し強くなってきた日差しを避けて、 木陰の下でお茶を飲んだりしていた。 こんな穏やかな時間がずっと続いてほしい・・・そんな想いを抱いてしまう。 そんなとき、ふと私の隣に座っていたセイラン様が、私の肩にもたれてきた。 セイラン様のこんなに近くにいられるなんて久しぶりのことで、一瞬ドキッとしたけれど、 顔を覗きこんでみると、セイラン様はなんだか眠たそう。 「セイラン様、お疲れでしたら少しお休みしますか?」 「大丈夫さ、と言いたいところだけど・・・少しでいいから休ませてもらってもいいかな?」 「はい!ゆっくりお休みになってくださいね」 「せっかくの2人の時間なのに・・・すまないね、アンジェ」 このまま私の肩にもたれてお休みになるのかな、と思っていたけれど、 しばらくするとセイラン様は不服そうに私の顔を見る。 「・・・ねぇ、アンジェ。君は僕をこのまま眠らせるつもりかい?」 「えっ?で、でも・・・他にどうすれば・・・?」 私が困っているとセイラン様は、 「恋人が眠るときには、君が膝枕をしてくれるんだろう?」 「・・・え?ええっ!!そ、そんな・・・」 「それとも、君にとって僕は恋人じゃないとでも言うつもりかい?」 「それは・・・・・・そ、そんなこと、ない、です」 すごく恥ずかしかったけど、本当のことだからつい答えてしまう。 その答えに満足したのか、セイラン様はすっと目を細めて、うつむく私の耳元でささやく。 「・・・可愛いね、僕のアンジェ」 ますます赤くなる私を見て小さく笑うと、セイラン様は本当に私の膝を枕にして横になってしまった。 「・・・もう、セイラン様ってば・・・」 口ではそんなこと言ってみたけれど、本当はセイラン様の一番近くにいられることがうれしかった。 膝にかかるちょっとした重みや、その温かさを感じられることがすごく幸せだったから・・・。 そんなことをしばらく考えていると、いつの間にか穏やかな寝息が聞こえてきた。 セイラン様・・・やっぱり疲れていらっしゃったのかもしれない。 もしかしたら、今日も無理して私に会ってくださったのかな・・・ なんてつい考えてしまう。 気持ちよさそうに眠るセイラン様の髪をやさしく撫でてみる。 「無理だけはなさらないでくださいね、セイラン様・・・」 「僕が無理をして君に会っていると思うのかい?」 「せ、セイラン様!!起きていらしたんですか!?」 まさか答えが返ってくるなんて・・・思いもしなかった。 さっと身体をを起こし、私の目をまっすぐに見つめて言う。 「僕は君に会いたいから会っているんだ。決して無理なんかしていないさ。 確かにこのところはアトリエにずっと籠っていたけれど・・・君から手紙が来てうれしかった。 僕だって、君に会いたいと思っていたんだからね」 セイラン様が起きていらしたのは驚いたけれど、 でもセイラン様も私に会いたいと思ってくださってよかった。 私だけが「会いたい」って思っていたわけじゃ、なかったから・・・ 日も暮れて約束の地から帰る途中、隣を歩くセイラン様が話しかけてきた。 「・・・来週もまた、ここで会ってくれるかい、アンジェ?」 「もちろんです、セイラン様!あっ、でも・・・」 「でも?」 セイラン様から誘ってもらえたことがうれしくて、少しだけわがままを言ってみる。 「指切りしてくださいませんか、セイラン様?」 来週も、必ずここで会えるように。 ==================================== |
らみゃさま、やっとこさ完成いたしました! 「セイコレ」というお題をいただいてから、早数日・・・ 一体何やってたんでしょうね、私? 構想に時間がかかりすぎたんだと思われます。 しかも私の筆はイモムシくんですからね!! そもそも、これはセイラン様ではないですね。 しかもオチなしです。 こんな創作しか書けなくてごめんなさい、ママ・・・(涙) |