「ねぇアリオス、今日は行きたいところがあるの」


そう言って、俺の腕を強く引っ張る。
「何処へ?」という疑問すら封じ込められたまま、
俺はただ、引かれるままに歩き出した。



こんなに強引なアンジェリークは、珍しい。
普段、自分からあまり「こうしたい」「ああしたい」と言わないヤツが、
今日に限って、有無を言わせず俺の手を引いていく。

それは、行く先に余程重大な『何か』があるということだろうか?




やって来たのは、天使の広場。
ここが目的地かと思いきや、
迷わず店の前を通り過ぎ、林の奥へ進んでいく。






そこにあったのは、小さな花畑―――






天使の広場の奥にこんな場所があったとは・・・
いかにもあいつの好きそうな場所だ、と思った。




「アリオス、お誕生日おめでとう!」



突然振り向いたアンジェリークからの一言に、
俺ははっとする。



・・・・・・不意打ち、だ。



自分自身でさえ忘れていた誕生日。
それをお前から言われて、初めて気付くなんて。


「誕生日・・・そう、だったな」
「ふふっ、ビックリした?
  この場所はね、アリオスと一緒に来たくて秘密にしていた場所なの」
「お前、普段はボンヤリしてるクセに、
  こういうことだけはやたら覚えてるよな」
「な、ッ!?」


俺の言葉に、アンジェリークは頬を膨らませて反論する。


「『普段はボンヤリ』って、どういう意味?
  こう見えても私、聖獣の宇宙の初代女王なんだけど」
「クッ、そうじゃない。そうじゃなくて・・・」


少し揶揄っても真面目に返してくるその反応に、
思わず笑いを噛み殺す。


「俺はお前に・・・感謝、してるんだ」


するとアンジェリークは、
さも不思議そうに、俺の顔を覗き込んでくる。


「感謝?どうして??」
「俺の誕生日を覚えてるヤツがいたこと。
  それが他の誰でもない、お前だったことを・・・」



「そんなの、当たり前じゃない」


何の迷いもない答え。



「だって、今の私は」
「聖獣の宇宙の初代女王様?」
「もう、茶化さないで!私は・・・」


さっきまでとは違う、真剣な表情。
真剣な眼差し。真剣な声。


「私は、アンジェリーク・コレット。
  今、あなたの目の前に居るのは、
  ただアリオスのことを大切に想う、一人の人間だから」



(・・・ああ、そうか。
  そんなお前だから、俺は・・・)



「立場が逆だ」だなんて、お前は怒るだろうか。
それでも、俺は・・・何故か今日渡さなければいけない、と思った。
ジャケットに忍ばせた、小さな箱を。




これは、約束の証。




お前のことだから、返事は決まっていると分かっていても、
その指に、お前自身に・・・誓う。




「なぁ、アンジェリーク―――」








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アリオスお誕生日おめでとう!
ここまで書いておいて、とは思うのですが、
本当は誕生日だからアリオスが主役のはずなのに、
むしろコレットにプレゼントしちゃってるって何事なんだ・・・。
それはさておき、アリコレ大好きな私、
今後もアリコレ関係が増えそうな気がいたします。
自分の、心の中で・・・ね?


―2009.11.22―


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