自分の部屋からベランダに出てみると、冷たい夜風が全身を包む。 見上げれば、数多の星々のきらめきが目に映る。 「・・・どんなときも、この夜空だけは変わらないのね・・・」 女王候補として王立研究院に、守護聖様の執務室に、 育成する大陸にと奔走していた日々が懐かしい。 それももう「懐かしい」なんて言えるようになってしまったことが、少し寂しいような気もする。 明日は新女王の即位式。 私、アンジェリークがこの宇宙の256代目の女王として、即位する。 もちろん補佐官はロザリア。 一緒に女王試験を受ける中で競い合ううちに、私たちは何物にも変えられない親友になった。 だから、悩み事も恋のことも何でも打ち明けあえた。 今では、こうしてロザリアと出会うチャンスをくれた女王試験に感謝してるくらいに・・・ 正直、女王になることが決まり、もう2度とパパやママに会えなくなるのはすごく悲しかった。 だって・・・私は普通に大人になって、ステキな人と結婚して、子供ができて・・・ そんな一生を過ごすんだろう、って思ってたから。 そして、いつまでもパパやママと一緒に暮らせると、 そう、思っていたから。 でも、私は女王試験の中でパパやママよりも・・・ ううん、もっともっと大切な人を見つけてしまったから。 最後にパパとママに会いに行ってその人を紹介した時、 二人とも本当に温かく迎えてくれてうれしかった。 一緒にご飯を食べて、たくさん話をして・・・ 私たちはまるで昔から家族であったかのように、 楽しい時間を過ごした。 「幸せになりなさい、アンジェリーク。父さんと、母さんたちのように・・・」 そう言って私たちを見送ってくれた二人の瞳が濡れていたことに、 私は気づいていたけれど。 「・・・うん。私、宇宙一幸せなお嫁さんになるからね!」 「アンジェリークは、私が命をかけて一生大切にします」 自分の好きな人と一緒にいられることが、こんなに幸せだったなんて。 パパやママも、こうして幸せに暮らしているのかしら・・・ 「・・・こんなところにいたのか、お嬢ちゃん」 振り向くと、そこには私の愛しい人・・・オスカー様がいた。 「こんなところにいたら風邪をひいてしまう。それに、明日はお嬢ちゃんの大切な即位式だ。 早めに休んだ方がいい」 「もうっ!!オスカー様ってば、いつまで私を『お嬢ちゃん』って呼ぶつもりですか!!!」 「いつものクセが抜けなくてな。 すまない、お嬢ちゃ・・・じゃない、アンジェリーク」 言いかけて、はっと気がつき訂正するオスカー様。 しかし、時すでに遅しで。 「今度『お嬢ちゃん』って呼んだら、嫌いになっちゃいますよ?」 そっぽを向いて、怒ってみるけれど。 「すまない、アンジェ。機嫌を直してくれないか・・・?」 後ろから温かくて力強い腕に抱きしめられる。 私が怒ると、いつもそう。 でも私がこうされることに弱いって、オスカー様は知ってるんだろうなぁ。 「大丈夫ですよ、本当に怒ってるわけじゃないですから・・・」 ついつい、またいつものように許してしまう。 「でも、明日からみんなの前で『お嬢ちゃん』って呼ぶのはダメですよ?」 「そうだな、明日にはこの宇宙の女王になるんだからな・・・」 感慨深そうにつぶやくと、おもむろに私の前に跪く。 「この炎の守護聖オスカー、命の続く限り女王陛下に永久の忠誠と愛を誓います・・・」 そして私の手を取り、軽く口づけする。 「オ、オスカー様・・・」 普段はあまり見せないその真剣な表情に、少しドキドキしちゃう・・・かも。 「さぁ、今日はもう寝た方がいい。ご案内いたしましょうか、女王陛下」 その言葉に、ふと言いようのない寂しさを感じた。 明日という日が、まるで私たちの関係すら変えてしまうような、そんな不安がよぎる。 「待ってください、オスカー様!!」 振り向いた優しい笑顔に、もう少し触れていたくて。 「少しでいいです。一緒に・・・この夜空を眺めませんか?」 明日からは、「女王陛下」と「守護聖」だけれど。 もう少しだけ、このままでいたいから・・・ 「あなたの『お嬢ちゃん』の最後のわがままを、聞いていただけませんか?」 ねぇ、オスカー様・・・ こんな風に想ってしまうなんて、私は女王失格ですか? ―――私の存在は、ただ一人あなたのためだけだと。 ====================================== |
やっと書けましたよ、オスリモが!! 「オスリモが書きたいー」と言っていたのはどこの誰でしょうね?(笑) しかし実はこの話、最初はシリアス・・・というか、BADENDだったんですよ。 しかし初めてのオスリモでそれは悲しいよなぁ、と思い、 話を捻じ曲げちゃいました!! あぁ、だからなんか違和感が残るのね・・・(遠い目) もしかしたら、そのうち元になった方のお話もアップするかもですー。 一体いつになることやら・・・ |